TOP / STORY TOP(re-rendaring dawn) / SCENE 015
日曜日、遅めに起きた朝。いや、もうすぐお昼。
liv.netのトップ画面を見て、僕の心臓は止まりそうになった。
いや、数秒間、本当に止まってしまったかもしれない。
一体何が起きているんだ?これは夢か?幻か?盛大なドッキリなのか?
ivメッセージの一部を解析した+ 音楽をBGMに、画面には“少女のイラスト”が表示されている。
実は 僕には、キヨたち友人はおろか、家族にもおそらく知られていない、秘密の趣味がひとつあった。イラストを描く事である。
秘密、といっても、別にやましい気持ちで隠しているわけではなく、わざわざ言う程でもない、あくまで個人的な趣味なので、結果的に秘密になってしまっているだけだ。
いつからイラストを描き始めたかは、正直あまり憶えていない。幼い頃、母に「上手だね」と褒めてもらい、それが好きになるキッカケだったように思う。以来、ヒマがあればその趣味に時間を割き、いつからか、投稿サイトに「Brownie(ブラウニー)」という名前で完成作品をアップするようになっていた。
最初は誰かに見てもらうためではなく、あくまで僕個人の記録用としてアップしていたのだが、知らない人たちが自分のアカウントをフォローし、イラストを「Favorite」登録してくれる事がとても嬉しく、励みになった。
そして今、イラストを描く事は僕の唯一の趣味になり、僕のイラストを気に入ってくれる 見知らぬ人たちに見て欲しい気持ちもあり、定期的に投稿サイトにアップするようになっていた。
最新作のイラストをアップしたのは、昨日の深夜3時だ。
週末、liv.netにアップされた音楽。これをアップしたのは、とても有名な音楽家のアカウントだった。
僕の好きな音楽家アカウントが、自分と同じようにliv.netを見ていて、ivのメッセージを解読し、そこから音楽を作ったという事に感動し、とても興奮した。
その曲はとても美しいメロディーで、それを聴くうちに、ふと、イラスト創作意欲=インスピレーションが湧いてきた。
描き始めたのは、晩ご飯を食べた直後だったから、完成したAM3:00まで約7時間ぶっ続けで集中して描いていた事になる。
ひとつの事にこんなに集中したのは、生まれてはじめてかもしれない。
完成した充実感と、思い通りのイラストが描けた満足感。その勢いのまま、いつもの投稿サイトにアップした。
タイトルは「iv」とつけた。
ivのメッセージに隠された音楽。そして、その音楽家が解読方法を発見したおかげで、他のメッセージの解読も進んでいた。
その音楽以外の解読結果には「何気ない言葉や単語」が多く「ivは歌っているんじゃないか?」という考察がなされていた。
ivが歌で何かを伝えようとしている。
このドキドキした気持ちが醒めぬよう、一気にペンを走らせて、1枚のイラストにすべてを込めた。
断片的な言葉たちと音楽からイメージした、ivの姿。もしも、本当にivという女の子が存在したら。
そんな、僕の描いたivのイラストが今、liv.netのトップページに表示されている。デカデカと。
一体どういう事なんだ…!!