TOP / STORY TOP(re-rendaring dawn) / SCENE 009
「イヴァを探しにJapanへ行くのかね?」
ブルックスが尋ねた。
「ええ。監視対象である私には、見張り役としてのSPや、監獄としての家もすべて議会側が用意してくれるらしいわ。オモテ向きには自分で引退した事になっているようだから、使い慣れたPCやデヴァイスがないだけで、VIP待遇ね」
「一刻も早くイヴァを探しに行くため、研究も名誉も捨てたわけか」
ブルックスは寂しそうな顔のままだが、エリザは一転 少し晴れやかな顔になったように見える。
「研究なんかより 大切な我が子を優先するのは 母親として当然の役目。これで晴れて自由の身なんだから、私が自分でイヴァを助けに行くわ。もう日本の警察は当てにしない」
その決意に満ちた表情はまるで、ブルックスの講義を毎回最前列で熱心に受け、弟子にしてくれと研究室に押しかけてきた、学生時代のエリザのようだ。
「私にできる事があれば、何でも言ってくれ」
イヴァの事はブルックスも当然知っている。
生まれた時からよく研究室に遊びにきていたその可愛らしい少女を、まるで自分の孫のように想っていた。
母親であるエリザには敵わないだろうが、同じくらい、イヴァの失踪に心を痛め、悲しんでいる。
壁に飾られたイヴァの写真のまわりには、誕生日を祝うデコレーションが慎ましやかに飾られていた。
今日12月24日は、イヴァの16歳の誕生日だ。…生きていれば、だが。
どこからともなく、クリスマスソングが聴こえる。